冴えない人間にとってのリーサルウェポンとしてのロックミュージック - アジカンデビュー10周年記念ライヴに思う
先週末に横浜スタジアムで2日間に渡って行われたASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)のデビュー10周年記念ライヴに行ってまいりました。せっかくなのでわたしのアジカンリスナー暦も総括するつもりでつらつらと書いてみる。
わたしのアジカンリスナー暦のスタートは彼らのファーストアルバム「君繋ファイブエム」の頃にまで遡る。当時の彼らは後に代表曲となる「未来の破片」「君という花」をキッカケに世にその名を広め始めた一方で、「くるりのパクリだ」などというdisも受けるという状況だったように思う。当時のわたしも最初はこの「くるりのパクリ」論に乗っかっていた。Vo.後藤正文氏(ゴッチ)がどアップで歌う「未来の破片」のMVからくるりの「東京」のMV(こちらもVo.岸田繁氏がどアップで歌ってる)を連想したこととメガネをかけてるという理由だけで、彼らの音源をロクに聞きもしないでしょうもないdisをしていたことに関しては若気の至りとはいえ反省することしきりである。
その後キッカケは忘れたが彼らの音源を耳にして、その思い込みは一瞬のうちに吹き飛び、以来わたしはアジカンの大ファンである。
そんなこんなで長年追っかけてきたアジカンがデビュー10周年を迎え、しかもその記念ライヴをスタジアムで行うという快挙にはいちファンのわたしも感慨深いものがあった。
前置きが長くなった。
肝心のライヴの詳細なレポートに関しては詳細なライヴレポートは他所におまかせするとして、わたしはごく個人的な感想を。ちなみに1日目と2日目の両日参加です。まずは各日を振り返ってざっくりとした感想を。
ファン感謝祭
1日目はファン感謝祭と銘打ち、オフィシャルでのファン投票の結果をもとに組まれたセットリストで、懐かしのあんな曲やこんな曲がてんこ盛りでした。中にはゴッチ曰く「生まれて初めて演奏する」という曲(脈打つ生命)もありファン感涙。か、どうかはその人次第だろうけど、わたしはかなり楽しめた。特に「脈打つ生命」はわたしが大好きな曲ということもあって相当アガった。
久々の曲、初めての曲てんこ盛りで「今月の俺たちの練習量たるや」とのことだったけど、演奏の荒さが否めない感があったのはちょっと残念だったけど、そこは思い出補正でというところか。
あと、リクエストランキングの性質上仕方ないし言うのも野暮だけど、楽曲の種類が偏りがちだったのもちょっと残念。
と、マイナスな話が続いたけど、それ以外はとてもとても楽しいライヴでした。
ランキング結果に関しては、最近のシングルのカップリングなんかも入ったら良かったのになぁと思った。すごく良い曲ばかりなのにライヴでもほとんどやってないようなので、今回のような機会にこそ!と思ったけど残念。
あと、新曲「ローリングストーン」の「深夜3時30分のbeat UK」という歌詞にニヤついたことも付け加えておく。
オールスター感謝祭
2日目はアジカンが「持てる限りのコネクションを使った」結果のゲストも交えてのライヴ。
ゲストを迎えたセッション曲が良かったのは言うまでもなく、それ以外の最近のサポートメンバーを迎えた楽曲もすごく良くて、演奏の充実度は前日の比ではなかったように思う。
ゴッチがツイッターかなんかで「1日目はこれまでのアジカン、2日目はこれからのアジカンを見せる」という旨の発言をしてたけど、ほんとそんな感じだった。
セットリストもアジカンの「今」ないし「これから」が存分に見えるもので「まだまだわたしのリスナー暦は伸びるな!」といったところ。
台風が接近していることもあり、荒天が心配されていたのでわたしもできる限りの備えをしてライヴに臨んだものの、フタを開けてみれば開演前と本編ほんの一時だけに雨が降っただけに留まり終盤には月を顔を出すほどの好天に恵まれたのはファンにとってもアジカンにとっても嬉しいサプライズだったかもしれない。
2日間を通して
両日ともゴッチが非常に饒舌だったのが印象的だった。そしてその中で「アジカンの音楽を見つけてくれた」ことへの感謝と「音楽だけは自分を『あっち行け』ってしなかった」と述べていたことがまた印象的だった。
そんな話を聞いて「ロックミュージックって『冴えない人間にとってのリーサルウェポン』って側面あるよな」って思った。
ロックなんて音楽はだいたい冴えない人間がやるものだ。自分の居場所を作るためにとにかくあがきまくる姿に時として生のエネルギーが宿り輝く。その先はどう変貌していくはわからないけど、初期衝動なんてそんなもの。と言うとロキノンっぽいけど、大体そんな感じだと思う。そしてアジカンもそういう道を歩いてきたバンドのひとつなんだとゴッチのMCを通じて感じた。
ゴッチの「感謝」やバンドの裏話はグッとくるものだったけど、さらに感動的だったのは、2日間を通してアジカンの音楽の変遷を感じられたことだ。
初期から3枚目のアルバム「ファンクラブ」期ころまでは、非常に内省的な要素と人との繋がりを求める曲が多かった。しかし時を経るにつれ(アルバムの枚数を重ねるごとに)、少しずつ内なる世界から飛び出し遂には「愛」を歌うまでになった。「愛」とは「繋がり」のひとつの到達点だ。10年をかけてアジカンの音楽はそこまで辿りついた。1日目の初期曲群と2日目の現在形曲群の流れを通してそれを感じられたのは本当に感動的だった。「踵で愛を打ち鳴らせ」や「今を生きて」にはほんとに感動した。
こんな「感動」なんてわたしのこじつけかもしれない。でも、そのことでわたしは前を向ける。そんならそれでいいやって。そう思うわけです。
「アジカンはこのあと15年、20年続けていく」とゴッチは言いました。その時を迎えたとき、アジカンの音楽がどうなっているか今から楽しみだ。
セットリストが気になる方はナタリーさんあたりでどうぞ。